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EUサミット総括~ドイツの支配下に堕ちたEU、ドイツの支配下を嫌ったイギリス

12月8・9日に行われたEUサミットは、事前から欧州の運命を決める会合として最大限の注目を集めていた。
その注目度合いを考えると出てきたヘッドラインはそれほどセンセーショナルではなかったが、たしかにEUの1つの転換点となった会合だったことは間違いない。

EUサミットのポイントを整理すると以下の通りである。

●財政協定
イギリスとハンガリーは同意しなかったのでEU条約を改正することはできなかった。EU加盟国の内25カ国が合意方向で進んでいる財政協定の内容は以下の通り。

・一般政府予算を均衡もしくは黒字とする。それは、年間の赤字がGDPの0.5%を超えなければこれをクリアしたものとする。
・3%の財政赤字上限を超えていると判断され次第、automatic consequenceを求める(日本語がよくわからない…)。
簡単に言ってしまえば、財政目標を守れなければ、自動的に財政主権の一部を奪われるということである。

●IMFへの最大2000億ユーロの拠出
IMFの資金融資を可能にするため、EU加盟国が最大2000億ユーロをIMFに拠出することが検討されている。
具体的な方法は10日以内に決定するとされている。

●ESM
ESMを前倒し運営させる。さらにEFSFと合わせて上限5000億ユーロの融資キャパシティとする。
ESMが前倒しで運営されれば、AAA格を失っても最大5000億ユーロの融資キャパシティを確保できる。
ただし、ESMへの銀行免許付与はドイツの意向によりなし。よって、資金調達は市場依存ということは変わりないので、EFSF同様、欧州債務を補える資金を確保できるかどうかは不明。


以上が、EUサミットのポイントである。

EUサミットで明確な進展が見られた点は、財政協定でEU加盟25カ国が合意方向であることである。
財政統合への第一歩であり、将来的なユーロ共同債発行へ小さいながら近づいたことは好感されよう。

ただし、それ以外のIMFの関与とESMに関しては引き続き不透明な部分が多い。
マーケットで期待されていたバズーカ砲とは、来年2月から始まるイタリアの大量償還に備える資金源の確保だっただけに、IMFとESM関連の話題で具体的な進展が見られなかったことは、今後も欧州問題でマーケットが荒れるだろうことを予想させられる。


さて、以上がEUサミットの個人的総括だが、以下で先週を振り返っての個人的見解を述べていく。

先週のECB理事会とEUサミットを振り返って率直に感じる印象は、ドイツの意見しか通っていないということである。

ドイツは兼ねてからECBの無秩序な資金拠出やユーロ共同債には否定的な意見を持っており、まずは財政統合が必要だと訴え続けてきた。
一方、周辺国のエクスポージャーを多く抱えるフランスは早急な対策である所謂バズーカ砲、例えばECBの無制限の国債買い入れやEFSFもしくはESMへの銀行免許付与を求めてきた。

しかし、EUサミットで明確に決まったことはドイツが求める財政協定だけである。
しかも、この財政協定は、目標をクリアできなければ財政主権が奪われるという実に厳しいものとなっている。ドイツは長い期間をかけてEUの財政を掌握する可能性もある。

ドイツにとって、フランスの主張するバズーカ砲を使わず長い時間をかけて財政統合を進めていくのは好都合なのかもしれない。
つまり、ユーロ安を長期間かけて誘導する戦略である。

以下のグラフは、ドイツの地域別輸出額の割合を示したものである。


(出所)ドイツ連邦統計局より筆者作成

グラフの通り、ドイツの貿易相手国の41%はユーロ圏の国であり、EU内の非ユーロ圏を含めてユーロを使わない国の割合は残りの59%である。
ドイツにとって、全体の41%を占めるユーロ圏域内との貿易では為替リスクなしで行うことができるので、ユーロを存続させるメリットが存在する。

一方、ユーロを使わない国との貿易でも、欧州危機を長期化させることでユーロ安を誘導させ輸出競争力を手にすることができる。
さらに、今回の財政協定により、今後新たなギリシャのような国が出てくれば財政主権を奪えることになったのだから、ドイツにとってはもはや早急に欧州危機を収束させる(=バズーカ砲を使ってインフレリスクを取る)インセンティブはかなり減ってきたと考えられる。

オランダやフィンランドなどユーロ圏の優良国は、ドイツほどの経済規模ではないがドイツと同じメリットを享受できる。
一方PIIGSの国々は、ドイツの援助なしには破綻以外の道がなくなってしまうので財政協定に合意せざるをえない状況だ。
そして、フランスは周辺国へのエクスポージャーが高いので一刻も速くバズーカ砲により欧州危機を収束させたいが、フランス1国の力では現在の欧州危機の前ではなす術がないので、ドイツの要求を受け入れるしか選択肢はなかった。もちろん、フランスもドイツと同じメリットを享受することができる。

一方、今回のEUサミットで大きな波紋を呼んだイギリスの拒否権発動だが、これは当然の行動のように思える。
もちろん、大陸欧州との溝は大きくなってしまったが、イギリスがドイツの提案する財政協定に合意する理由はどこにも見当たらない。

長くなってしまったのでイギリスに関しては次回エントリーで書こうと思う。
あしからず。


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  • 2014-07-01 05:51
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