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伊藤忠のボーナスから考えられる商社のピークが過ぎたという現実

ちょっと前の話になるが、日本企業の夏のボーナスの時期にこんなニュースを見た。

伊藤忠商事が特別ボーナス、夏季賞与にあわせて

記事によると伊藤忠商事は通常の夏季賞与とは別に特別ボーナスという形で社員1人当たりに数十万円を支給したらしい。

不況にあえぐ日本経済の中でも過去最高益を更新している商社業界、流石に太っ腹だ。
多くの人はこう思ったに違いない。

でも、僕はこう思った。
なぜ、通常の夏季賞与に上乗せしないで、特別ボーナスという形で支給したのだろうか。

答えは明白である。
それは、商社のピークが昨年度だと、経営陣自身が悟っているからである。

ボーナスというのは通常前年比●●%という形で決まる。
つまり、今年の夏季賞与を多く支給してしまえば、必然的に次回の賞与も高くなってしまう。
例えば、今年の夏季ボーナスが300万円支給されたとしよう。
翌年度の業績は多少悪化して、ボーナス水準は前年比90%になったとする。
その場合、翌年度のボーナスは300万円*90%=270万円になる。

これを伊藤忠が採った特別ボーナスという形で支給するケースを考えると、
今年のボーナスは例えば、通常の夏季賞与250万円+特別ボーナス50万円=300万円などになるだろう。
翌年度のボーナスは、前年の通常のボーナスの90%になるので、
250万円*90%=225万円
ということになる。

特別ボーナスという形をとると、翌年度の賞与を約17%削減できることになる。
伊藤忠の平均年収が1000万円だとして、そのうち300万円がボーナスだと考えると、伊藤忠の社員は2012年3月末時点で約4000人いるので、賞与総額は300万円*4000人=120億円になる。
120億円の17%は20億円である。
(良い業績を上げているので社員への還元は怠れない、しかし来年度の見通しはそれほど良くない、といった状況では、社員のモチベーションを下げることなく来年度のヘッジもできる非常に有効な手段である。)

おそらく平均年収はもっと高いと予想されるので、特別ボーナスという形を採用することによる翌年の賞与削減効果はもっと大きいだろう。


商社のピークが過ぎたことを、伊藤忠のボーナスだけで語るつもりはない。
商社は随分前から資源依存からの脱却をうたっているが、商社の利益構造を見れば依然資源依存構造であることに疑いの余地がない。
そして、資源ビジネスのような右から左へ物を流して鞘を抜くというold business以外で商社が利益を上げられるとは思っていない。
つまり、今後も商社は資源に依存せざるを得ないのだ。

以下は、三井物産のセグメント別利益である。


(出所)三井物産アニュアルレポート

利益のほとんどをエネルギー部門(石油、石炭など)、金属部門(鉄鉱石など)であげていることがわかる。

これらの資源価格は下落し始めており、最近では資源ブーム終焉が囁かれている。
以下は、WSJの資源ブーム終焉に関する記事である(英字)。

Miners Retrench in Australia

実際の石炭・鉄鉱石の価格の推移を見てみよう。




(出所)Bloombergより筆者作成


別に商社が潰れるわけではないが、商社の資源依存構造と資源価格の推移を考えれば、商社のピークは過ぎたと考えるのが普通である。

僕の根本的な考えの1つに栄枯盛衰というものがある。
1つのものが永遠に栄えるということはないのである。
また、聞けば最近の就職活動での一番人気は商社であり、優秀な学生はこぞって商社を目指すという。
2008年以前、外資金融機関が就職活動の一番人気であり、優秀な学生は皆外資金融を目指した。
しかし、数年後の今、外資金融の現状はもはや皆が知っているようにまさに惨劇である。
当時、外資金融ブームで入った優秀な若者は既に半分以上は退社を余儀なくされた。

経済には波があるものだ。
本当に優秀な人は、常にその先を見ているのだろう。

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Comments

[C5] 質問

▲90%
こちらのブログでは▲はどんな意味で使っていますか?
ちょっと解釈ができないのですが。
  • 2012-09-05 14:16
  • URL
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[C6]

▲はマイナスという意味で使いました。
が、そうなるとちょっと意味合いがおかしくなってしまいますね(汗)
文章を直しました。ご指摘ありがとうございます。

また、文章内の()部分を加筆しました。
  • 2012-09-05 15:49
  • 澤村
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