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中銀Weekを前にして思うこと~世界が直面している問題

マーケットは、8月1日のFOMC、8月2日のECB理事会での追加金融緩和への思惑を背景とした値動きが続いている。
短期的にマーケットを見る場合、この2つのイベントを無視することはあり得ないと言えるほど重要なイベントである。
一方で、長期的な相場を読む上では、追加金融緩和というのは大きな流れの中での一部でしかないだろう。
なぜなら、金融緩和では今の経済危機を抜本的に解決することが難しいからである。長期的により重要なのは、雇用市場や消費市場が上向き、またインフレ指数が安定することである。

過去、QE1,QE2と大規模な量的緩和を2度行ったアメリカを参考に、金融緩和が実体経済にあまり効果をなさないことを説明しようと思う。

金融緩和の表向きの目的は、中央銀行が資金の出し手となり、そのお金が市中に出回り実体経済の活動主体(企業や個人)に行き渡り、好循環的な経済活動を促進することである。
しかし、実際にはいくら中央銀行がお金を刷っても、今のような不景気の状況では企業や個人に資金需要(お金を借りる需要)がないため市中に出回る資金量が増えることはあまりない。



(出所)FRBより筆者作成

これは、FRBのマネタリーベースとアメリカのマネーサプライの推移である。
簡単な説明に留めておくが、マネーサプライとは市中に出回っているお金の総量を指している。
一方、マネタリーベースとは、マネーサプライの基となる通貨であり、中央銀行が供給する通貨の総量である。

アメリカの中央銀行であるFRBはリーマンショック後、2度のQEというお金を大量に刷る行動を行っているので、マネタリーベースを示す青線は2度大幅に上昇しているのがわかる。これらがQE1,QE2の結果である。

一方、同時期のアメリカのマネーサプライ(赤線)を見ると、たしかに一貫して上昇しているが、QEをやる以前の増加率(つまり赤線の傾き)に大きな変化はない。
QEを行いマネタリーベースを大幅に拡大させても、それが直接マネーサプライを増えることにはつながっていないことがわかって頂けるだろう。


このように、景気が悪くそもそも資金需要がないところに大量のお金を供給しても効果が薄いことは明白である。
もう満腹の人にご飯をあげても、これ以上は食べられないのと同じようなものだ。

では、中央銀行が刷ったお金は、市中に流れずにどこへ向かったのか。
それは、すでにご存知のように株式マーケットなどのリスクアセットと呼ばれる金融商品に流れたのである。
金融緩和を行えば、お金が余るので行き先を失ったお金がリスクアセットに向かう、所謂「過剰流動性相場」と呼ばれる現象である。

冒頭、金融緩和の表向きの目的、と書いたが、真の目的は過剰流動性相場を形成させてマーケットが大崩してしまうのを防ぐことにあるだろう。

マーケットが崩壊してしまえば信用収縮が起こり、短期金融マーケットが機能不全となり実体経済に悪影響が発生するので、金融緩和にはそれなりに意味はある。
しかし、それは痛みを抑えるだけであり、本来の回復、つまり実体経済の浮上には繋がらない。
金融緩和がモルヒネと呼ばれたり、時間稼ぎと呼ばれる理由はここにある。

また、ただ時間稼ぎをするためにだけに何十兆円という莫大なお金を使うことは、費用対効果を考えた時に正しいのか、という疑問が、中央銀行がQEをあまりやりたがらない理由となっている。

(余談だが)こんな背景がありながら、ドラギ総裁が「Believe me」と言って強く緩和を示唆したのは、莫大な費用を使ってまでやらなければいけないほど、欧州が悪化しているということである。

QEが実体経済を浮上させることができないのなら、何が有効なのか。
それは政府の財政出動である。
政府が国債を発行し、そのお金で公共事業などを興せば、そこに仕事が生まれ雇用が生まれ消費に繋がるという好循環ができる。
しかし、今の先進国はどこもかしこも財政難で財政出動ができない。

金融緩和の効果は薄く、財政出動もできない中で、どうやってこの世界的な危機から脱することができるのか。
これこそが、2008年以降世界中の優秀な経済学者や政府、当局者たちが必死に考えているが未だにその解答を見つけられずにいる問題である。

もし読者の中で、この問題に対する明瞭な答えを見出し実行に移すことができれば、一躍世界のヒーローになれることだろう。

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