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バーナンキ議長の議会証言からQE3の可能性を考える

昨日のバーナンキ議長による議会証言は、最近のアメリカの経済指標が悪化していること、8月1日にFOMCを控えていることなどから、追加緩和への手がかりとなる発言があるのではないか、と注目されていた(ちなみに、本日も議会証言はある)。

バーナンキ議長が発言した内容は以前と大きな差はなく「必要があればいつでも追加措置を講じる用意がある」というものであり、これには具体性がなくマーケットは当初失望売りで反応した。
しかし、その後の質疑応答の中でバーナンキ議長は、FRBができ得る策として、以下の4つを挙げた。
① 米国債やMBSを追加購入するという所謂「バランスシートの拡大」(QE3)
② コミュニケーション方法の変更、つまり「時間軸の延長」
③ 連銀窓口貸出
④ 超過準備金利(IOER)の引き下げ

これらを聞いてマーケットは持ち直しの動きを見せ、なんとか8月1日のFOMCへ向けて期待をつなげることに成功した形である。

マーケットが最も強く求めているのは無論QE3と呼ばれる「バランスシートの拡大」である。
もちろん、このQE3を行えば株価は上昇、企業マインドも向上しそれが雇用や消費にポジティブな影響を引き起こす可能性は十分にある。
実際、過去2度のQEでは株価が大きく上昇し、世界の多くの人たちが景気は回復したという錯覚を覚えた。実際、今景気が回復しているなどと感じている人はほとんどいないであろうから、錯覚という言葉に誤りはないだろう。

昨日のバーナンキ議長の発言から考えると、Fedがとれる選択肢は4つであり、その中で最も強力なのはQE3である。
言い換えれば、QE3はFedが使える最後の武器ということになる。

実際にバーナンキ議長は最後の武器であるQE3を発動させることはあるのだろうか。
バーナンキ議長は追加緩和を行う条件として、「雇用の悪化」と「デフレリスクの高まり」の2点を挙げている。これはFedのデュアルマンデートとも合致している。

僕は、バーナンキ議長はQE3という最後の武器を発動させることに相当大きなためらいを持っていると考えている。
なぜなら、先ほど書いたように、QEによる景気回復は「錯覚」であることをバーナンキ議長が十分に理解しているからである。

以下は、アメリカの非農業部門雇用者数変化である。


(出所)米国労働統計局より筆者作成

このグラフは過去何度も紹介しているが、サブプライムショック~リーマンショックで失われた雇用は、2回のQEを行った今も取り戻せていない。バーナンキ議長が何度も「景気回復は苛立たしいほど鈍い」と言いたくなる気持ちがよくわかるグラフである。

また、下はS&P500指数である。


(出所)Bloombergより筆者作成

赤丸の箇所は、過去2度のQEの終了時点である。
いずれも、株価はQEの終了を前に急落している。QEにより無理やり持ち上げた株価は、QEがなくなれば落ちるのは当たり前である。QEによる景気回復は錯覚であることをよく物語っている。

QE3が最後の武器であり、最後の武器でも本物の景気回復を引き起こすことができないことをバーナンキ議長は理解しているはずである。
これらを踏まえて、バーナンキ議長が自らの選択肢を使い切ることはしないだろうと、僕は考えている。

もしQE3があるとすれば、それは以下のような状況の時だろう。
・雇用の悪化やデフレが予想以上に進み、もはや躊躇する猶予がない場合
・本物の景気回復の兆しが見えている段階でQE3によって本物の景気回復が引き起こされたと演出できる場合
・実はQE3が最後の武器ではなく、FedにはQE4やQE5を行う余力がある場合

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