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スペインの銀行救済(約10兆円拠出)は良い話か、そうでないか

この週末、スペインが正式に銀行の資本不足で救済を求め、EUは1000億ユーロ(約10兆円)の救済を決定した。
これで、ユーロ圏で救済を求めた国は、ギリシャ・アイルランド・ポルトガルに次いで4カ国となり、PIIGSと呼ばれた国の中で、救済を求めていないのはイタリアのみとなった。
ただしスペインの場合、前の3カ国とは違い、国自体の資金調達ができなくなったのではなく、あくまで資本不足は銀行セクターの問題である。スペインは依然自力で国債を発行して資金調達をしている。その点で、前の3カ国とはやや状況は異なる。


既にマーケットをよく見ている方ならご存知のように、このニュースを受けてユーロは大きく反発した。とりあえずマーケットはポジティブに受け取ったということである。

ただし、長期的な視点で見ると、僕はこの措置がそこまでポジティブだとは考えていない。
ユーロ圏に対しては、このブログを通して過去に幾度となくダメ出しをしてきて、またダメ出しをするのは心苦しいが、今回の措置も結局は「問題の先送り」でしかない。

もちろん、瀕死の状態であるスペインの銀行にお金を入れて問題を先送りさせることは、目先の危機を回避するという点でもちろんポジティブである。マーケットが反発するのは当然の動きだ。

しかし、長期的に見ればこれはユーロ圏の本質的問題の解決には繋がらない。
この措置に対するアメリカのガイトナー財務長官のコメントが、かなり的をえていると感じるので紹介する。

「ユーロ圏の回復力とって不可欠な財政統合に向けた道筋の具体的な一歩」

このコメントだけではやや説明不足であるが、このコメントには多分にリップサービスというか、EUの未来の行動への期待(プレッシャー?)が含まれているように感じられる。
EUの抱えている本質的問題の解決のためには「財政統合」が不可欠であり、今回の措置が財政統合に繋がらなくては意味がないということである。

しかし、実際には財政統合には繋がらないと僕は考えている。
財政統合とは、ユーロ圏の1つの財政をつくることである。
スペインの悪い財政内容もドイツの良い財政内容も一緒にする、つまりスペインの資本不足をドイツが補う、であったり、もっと言うとスペインのリスクをドイツが請け負うことが必要なのである。

ここで注目したいのは、スペインの銀行への支援の「仕組み」である。
現時点で決まっている仕組みは、
① EFSFもしくはESMがスペインの銀行救済基金に資金を拠出する
② スペインの銀行救済基金がスペインの銀行に資金を入れる
という順序である。

一部で言われていたスペインの銀行への「直接支援」ではないことがポイントである。

要は、この仕組みでは、スペインの銀行のリスクをスペインの銀行救済基金へ移管しただけ、つまりスペインの民間のリスクを公的部門に移しただけということになる。

スペインの抱えている問題は、低い成長率と高い失業率、そして毎年垂れ流しの財政赤字である(スペインの公的債務はそれほど多くない)。

この仕組みでは、リスクはスペイン国内に留まっており、大雑把な言い方をしてしまえば、ただ民間の債務を政府に移管して政府の債務が増えただけである。

スペインのリスクをドイツが請け負う第一歩になることが期待されているが、EFSF
もしくはESMが直接支援をしないという時点で、その第一歩への期待は小さくならざるを得ない。

最後にもう1つ。
EFSFで支援するのか、ESMで支援するのかでも違いが発生してくると思われる。
EFSFでのルールは、支援する場合、拠出国全ての国の同意が必要となる。ESMの場合は賛成多数(拠出割合で国ごと票数が異なる)で支援が可能である。
また、EFSFは実体のない基金であるが、ESMはより組織に近い。よって支援後の柔軟性という意味でも違いが出てくると考えられる。
既に、フィンランドはEFSFで支援する場合は担保を要求すると発言している。

このニュースを見て簡単に安心するにはまだ早い、と考えたほうが無難だろう。

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この週末、スペインが正式に銀行の資本不足で救済を求め、EUは1000億ユーロ(約10兆円)の救済を決定した。これで、ユーロ圏で救済を求めた国は、ギリシャ・アイルランド・ポルトガル

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